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絶体絶命

「直君・・・落ちた。」

「え======っ!!」

電話口で思わず大きな声を出してしまった。
彼は、試験に落ちたのだ。

彼は、とある資格を取るべく
学校に通い、慣れない座学と格闘していた。
たまに、電話で話をする彼、
ある日、資格を取るべく学校に通う思いを熱く語ってくれた。

「絶対、合格しますよ!」
節々でこのセリフを言った私。
しばらくして、彼と彼の奥さんに会った。
「直君、コーヒーいれてあげるわ。」
「ありがとうございます。」
ホットコーヒーにゆっくりと唇を近づける私に彼が言った。
私だけに聞えるよう
彼が言った。
「うちのんがさ~、授業料の入金したとたんに・・・落ちたら殺すよ って言うたんよ。」

人間を突き動かす要因の1つに

「恐怖」

がある。

自分の命がかかると半端なく必死になる。
何十万という授業料
通いのガソリン代
犠牲となる家族の時間
等々・・・
奥さんにしてみれば
「落ちちゃった!てへ。」
は、ありえない世界の話なのだ。
ゆえに、

「殺す」

というキーワードを選択したのだ。
「絶対合格せんといけんですね。」
「うん。」
重苦しい空気が包みかけたところで、
「コーヒーごちそうさまでした!スターバックスのより美味かったです!」
何故かいつもよりレベルの高い愛想を振りまいた。

そらから約半年後、
冒頭の電話があったのだ。
「来年またリベンジです?」
「今は、ちょっと来年の事は考えれん・・・。」
当たり前だ。
なんという愚問。
今、彼が意識を集中しなければならないのは、
朝食の味噌汁に毒は入っていないだろうか?
車のブレーキはちゃんと作動するだろうか?
生命保険の資料がポストに投函されていないだろうか?

なのだから・・・



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2012-07-20